当社グループは、2023年4月に気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言への賛同を表明しました。
今後も、TCFD提言に基づく情報開示(ガバナンス、戦略、リスク管理、指標と目標)を充実させるとともに、
環境に配慮した事業活動を継続することにより、
持続可能な社会の実現への貢献と企業価値のさらなる向上に努めてまいります。

TCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)とは
気候変動に関わる金融市場の不安定化リスクの低減を目的に、G20の要請で金融安定理事会により設立されたタスクフォースで、気候変動がもたらすリスクおよび機会について企業等が把握・開示することを推奨する提言を2017年6月に発表しました。
TCFD

ガバナンス

当社グループでは、代表取締役社長を委員長とした「サステナビリティ委員会」を設けており、関連部門の責任者に加え、アドバイザーも出席し、グループ全体の気候変動への対応を含むサステナビリティに関する方針や施策の審議・決定およびその施策の進捗状況の管理等を行っています。また、これらの審議の結果は定期的に取締役会に報告され、監督する体制としています。
また、充実した議論と機動的な対応を行うため、サステナビリティ委員会の下部組織に各事業部・本部・グループ会社の担当者で構成する「TCFD分科会」を設置しています。

戦略

当社グループの主力事業である化学品関連事業、樹脂・エレクトロニクス関連事業、情報システム関連事業、空調設備工事関連事業、住宅設備機器関連事業およびエネルギー関連事業を対象に、気候変動が及ぼすリスクと機会およびその影響の大きさについて分析・検討を行いました。また、複数の将来シナリオを想定したうえで、各シナリオ下で気候変動が及ぼすリスクと機会が当社グループに与えうる影響を把握し、今後の戦略や対応の検討に活かすことを目的としてシナリオ分析を行いました。

(1)シナリオ分析の前提

気候変動に関するリスクと機会は、政策や法規制など気候変動対策や社会的要求の変化等によって生じる「移行リスク・機会」と、自然災害や気温の上昇などによって生じる「物理的リスク」に分けることができます。これらのリスク・機会が当社グループの事業活動に与える影響を「大」「中」「小」の3段階で評価しています。

シナリオ 概要 参照した主な外部シナリオ
1.5℃シナリオ 2050年カーボンニュートラルに向けて、政策・規制導入や市場変化が急速に進行することで、地球の平均気温上昇が産業革命前の水準に比べ1.5℃に抑えられる。
  • IEAの2050年までのネットゼロエミッションシナリオ(NZE)
  • IPCC RCP2.6
4℃シナリオ CO2排出量削減に向けた政策・法規制や社会の取り組みが進まず、地球の平均気温上昇が産業革命前の水準に比べ4℃となる。災害などの気候変動による影響が甚大化する。
  • IEAの公表政策シナリオ(STEPs)
  • IPCC RCP8.5

(2)特定したリスクと機会

【移行リスク】

気候変動要因 事業インパクト 期間 影響度 対策
政策・法規制 炭素税の導入
  • エネルギーコスト、原材料コストの増加
中~長
  • GHG排出量の削減目標に基づき、戦略的に削減を継続
  • 省エネの推進
  • 再エネ価格等を随時チェックしながら再エネ導入を推進
  • J-クレジット制度の活用
  • 製造工程の効率化
GHG排出規制の強化
  • 製品や原材料に関する規制強化による製造コストの増加
  • 脱炭素に向けた設備投資の増加
  • 資材不足、資材の高騰
技術 次世代技術の普及
  • 技術導入の遅れによるシェア減少
  • 設備投資や研究開発費の増加
  • AI、ロボットの台頭による人間の技術力低下
短~長
  • 当社グループのDXやイノベーション、あるいはイノベーションを創出するパートナー企業とのビジネスやコラボレーションを通じて、循環型社会の実現に貢献する製品・サービスの開発・販売を推進
  • エネルギーシフト等の動向の注視と戦略的な対応
市場 顧客の嗜好変化
  • GHGを多量排出する商品のニーズ低下
  • グリーン調達要件の厳格化による対応コストの増加
環境に配慮した調達
  • 環境に配慮した原材料への切り替えによる調達コストの増加
  • 環境汚染物質の範囲が拡大し、販売中止の商品・原材料が発生
中~長
評判 投資家の評判変化
  • 不十分な情報開示に対してステークホルダーから批判を受け、当社ブランドの価値が毀損
短~長
  • 株主や投資家にとって有益な情報を積極的に開示

【物理的リスク】

気候変動要因 事業インパクト 期間 影響度 対策
急性 自然災害の激甚化
  • 自然災害による生産拠点の損害発生、操業停止による売上高の減少
  • サプライチェーン寸断による原料や資材調達の遅延による売上高の減少
  • レジリエンス対応コストの増加
  • 天然由来原料の不足による価格高騰、生産量の減少
短~長
  • BCP対策の強化
  • 複数生産体制の維持、調達先の分散の推進
豪雨増加
  • 通勤時や運送時の交通事故の多発
  • 事業所付近の河川の氾濫、土砂崩れによる操業停止
  • 落雷による停電で操業停止
短~長
慢性 平均気温の上昇
  • 熱中症リスクの増大
  • 空調コストの増加
  • 作業環境の悪化による生産性の低下
  • 就業時間帯の変化による深夜業務の増加および工事の長期化
  • 水害リスクの増加による保険料の増加
  • 建設テックの活用
  • 建築物、インフラの定期健診の実施
  • 労働環境の改善
生物多様性の減少
  • 天然由来原料の不足による価格高騰、生産量の減少
  • 自然災害に強い天然由来原料の開発、品種改良
  • 培養技術を用いた新たな原料の模索

【機会】

気候変動要因 事業インパクト 期間 影響度 対策
製品/サービス
  • 太陽光パネルから金属やマテリアルを回収する需要の増加
  • 炭素繊維複合材の端材や廃材のリサイクル需要の増加
  • 軽量化を目的とした電気自動車やロケット、人工衛星等向けのCFRP(炭素繊維強化合成樹脂)の需要の増加
  • バイオプラスチックの製造に必要な化学品の需要の増加
  • バイオプラスチックを利用した製品の需要の増加
  • 省エネ機器の需要の増加
  • AIやRPA活用による自動化の促進
中~長
  • 環境負荷の低減や資源の有効活用に効果がある製品やサービスの開発、販売
エネルギー
  • 水素エネルギー市場が活性化
  • メタネーション触媒の新規市場や水素エネルギー社会のインフラ、SAF(持続可能な航空燃料)合成燃料の製造に必要な化学品やその残渣の有効活用に関する需要の増加
  • マイクロ水力発電の拡販
  • クリーンエネルギー市場におけるニーズ把握と市場開拓の推進
資源の効率性
  • エネルギー管理/データ解析などからエネルギーの抑制につながる環境配慮型ビジネスが活性化
  • 省エネ、再エネ技術の導入によるエネルギーコストの減少
  • お客様の電気代高騰対策としてデータセンターの需要の増加
短~長
  • IoT/AI活用によるエネルギー消費量の最適化制御
  • 再エネを利用したデータセンタービジネスの推進
市場
  • GX市場への参入や、環境負荷の低減を目指したリノベーション・コンバージョン市場への参入
  • 補助金活用が一般化し、ZEB/ZEHの需要が増加
  • ESG投資家層の拡大による株価上昇および資金調達基盤の強化
中~長
  • J-クレジット制度の活用
レジリエンス
  • サプライチェーンの見直しや物流ストックポイント拠点の構築に係る需要の増加
  • データ損失回避のため、 データの高度な安全確保を可能とするクラウドサービスの需要増加
  • 排水処理性能等の向上を目的とした防災工事の増加
  • 建築のレジリエンシーデータの構築サービスの需要の増加
  • 災害対応施設のBIMモデル化の需要の増加
  • インフラ強靭化に伴う耐震補強製品のラインナップ拡充
短~長
  • サプライチェーンの見直しや物流・ストックポイント拠点に関する提案
  • レジリエンスの向上に資する製品やサービスの開発、販売

リスク管理

当社グループでは、危機管理担当取締役を委員長とする「リスクマネジメント委員会」を設けており、当社グループが抱える多様なリスクを把握し、リスクに対して対策を講じ、発生頻度の軽減および損失の最小化に努めることにより、当社グループのステークホルダーから信頼を獲得し、企業の社会的責任を果たすことを是と考えております。
リスクマネジメント委員会では、全社的に重要と考えているリスク・機会について審議・決定しております。特に気候変動に関するリスクについては、サステナビリティ委員会の下部組織である「TCFD分科会」が中心となって、リスクの識別・評価・管理を行い、その結果をサステナビリティ委員会を通じてリスクマネジメント委員会にも報告することとしております。リスクマネジメント委員会は、各事業部・グループ会社およびTCFD分科会でのリスク分析結果について審議し、その審議結果をリスク対策およびビジネスに反映することとしております。
また、環境への対応について、ISO14001に基づく環境マネジメントシステム(EMS)を構築しており、EMSの活動結果は、リスクマネジメント委員会に報告されます。
リスクマネジメントに関する詳細は、以下のURLからご参照ください。
https://www.mitani.co.jp/company/risk_management

指標と目標

CO2排出量については、2050年度までに実質ゼロ(カーボンニュートラル)とすることを目指し、2030年度までにScope1+2を2013年度対比で46%削減し、Scope3を2023年度対比で5%削減することを目標として設定しております。
当社グループには世の中のCO2排出削減に貢献できる製品・サービスが多数存在するため、当社グループ製品・サービスによるCO2削減貢献量についても目標を掲げることを検討してまいります。

(単位:t-CO2)
対象Scope 排出量実績 目標年排出量
2023年度 2030年度 2050年度
Scope1※1 + Scope2※2 2,517 1,175
(2013年度対比46%削減)
0
(2013年度対比100%削減)
(Scope1) 402 - -
(Scope2) 2,115 - -
Scope3※3(Category1,2,3,5,6,7)※4 262,590 249,460
(2023年度対比5%削減)
0
(2023年度対比100%削減)
※1 Scope1:当社自らによる温室効果ガスの直接排出
※2 Scope2:当社が購入した電力の使用による温室効果ガスの間接排出
※3 Scope3:当社のサプライチェーンにおけるその他の間接排出
※4 Category1:購入した製品・サービス
    Category2:資本財
    Category3:燃料およびエネルギー関連活動(Scope1・2に含まれていないもの)
    Category5:事業から出る廃棄物
    Category6:出張
    Category7:雇用者の通勤